精液検査の結果に不安を感じた方へ|基準値の本当の意味と対処法
🔷精液検査の基準値とは
🔷精液検査で特に重要な3つの項目
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項目名
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意味
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WHO 2021年 基準値
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なぜ大切?
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前進運動率
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前に向かって泳ぐ精子の 割合
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30%以上
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精子が卵子までたどり着くには、まっすぐ泳いで進む力が必要です。進まずその場で動いているだけでは、卵子には届かず、自然妊娠は難しくなります。
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精子濃度
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1ml中にいる精子の数 (百万単位)
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16×10⁶/mL以上
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精子はゴール(卵子)までの長い道のりを泳いでいきますが、その途中で多くが脱落してしまいます。精子の濃度が低いと、スタート時点の数が少ないため、ゴールにたどり着ける精子もほとんどいなくなってしまいます。
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総運動精子数
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運動している精子の合計(精液量×濃度×運動率)
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2000万以上が目安※
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総運動精子数は、“動ける精子が何匹いるか”という実際の戦力を示す大切な指標です。精子の数と動きをあわせて評価するため、妊娠のしやすさと強く関係しています。
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🔷妊娠の可能性にあまり影響しにくいとされる項目
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項目名
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意味
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WHO 2021年 基準値
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解説
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|---|---|---|---|
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精液量
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一度の射精で出る精液の量
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1.4mL以上
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精液量が少ないと不安になるかもしれませんが、精子の濃度や運動率が良好であれば、自然妊娠が成立する可能性は十分にあります。
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正常形態率
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形が正常な 精子の割合
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4%以上 (Kruger)
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形が悪い精子でも受精できる場合があり、単独では妊娠率との関連は弱いとされています。
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🔷 精液検査の結果が悪かったときに、どうするか?
■ 1回の検査結果で結論を出さないことが大原則です
✅ 次に何をするべきか:3つの柱
① 【もう一度、精液検査をする】
WHOのガイドラインでは、精液検査で異常が出た場合は、少なくとも1週間以上あけて、できれば3か月以内に再検査を行うことが推奨されています。
② 【生活習慣を整える】
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項目
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アドバイス
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🛌 睡眠
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毎日6〜8時間、質のよい睡眠をとることが大切です
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🚭 禁煙
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喫煙は精子濃度・運動率・DNA断片化を悪化させる(多数の論文あり)
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🍺 飲酒
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大量に飲むのは控えた方が安心です。
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🏋️♂️ 肥満
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BMI25以上の方は、精液の状態が悪くなることがあり、減量によって 改善することもあります。
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🌡 高温環境
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長風呂、サウナ、膝上でのPC作業などは避ける
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💊 サプリ
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CoQ10、L-カルニチン、ビタミンC/E、亜鉛などが精子の質改善に一定の効果がある(※個人差あり)
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③ 【必要に応じて専門的検査を行う】
1 Malm, G. (2019). Association between semen parameters and chance of fatherhood—a long-term follow-up study. Andrology, 7(1), 76–81. https://doi.org/10.1111/andr.12558 PMID: 30525303
2 Hamilton, J. A. M. (2015). Total motile sperm count: a better indicator for the severity of male factor infertility than the WHO sperm classification system. Human Reproduction, 30(5), 1110–1121. https://doi.org/10.1093/humrep/dev058 PMID: 25788568
3 Bostofte, E. (1982). Relation between sperm count and semen volume, and pregnancies obtained during a twenty-year follow-up period. International Journal of Andrology, 5(3), 267–275. https://doi.org/10.1111/j.1365-2605.1982.tb00255.x PMID: 7118266
4 Patel, P. (2019). Impact of abnormal sperm morphology on live birth rates following intrauterine insemination. The Journal of Urology, 202(4), 801–805. https://doi.org/10.1097/JU.0000000000000288 PMID:31009287
5 Keel, B. A. (2006). Within- and between-subject variation in semen parameters in infertile men and normal semen donors. Fertility and Sterility, 85(1), 128–134. https://doi.org/10.1016/j.fertnstert.2005.06.048 PMID: 16412742
